東大阪市獣医師会の取り組み~動物と人の共存・健康を守るお医者さん~

こんにちは、e-yan通信部です。

 

今回私たちは東大阪市獣医師会へ取材に行ってきました。

会の中でも最前線で活躍されている、寺田動物病院の寺田芳徳医院長にお話を伺いました。

 

 

 

獣医師という職業について

皆さんは獣医師という職業にどのようなイメージをもっていますか?

 

獣医師さんと聞くと「動物の健康をみてくれるお医者さん」というイメージが強いのではないでしょうか。

もちろん、それも正解ですがもう一つ大きな役割が獣医師にはあります。

 

それは、私たち人間の衛生環境を適切に保つための事業である「公衆衛生」です。

公衆衛生とは、例えば、「食中毒はどうすれば起こらなくなるか」や「インフルエンザが流行した場合はどう感染拡大を防ぐか」などを考えることです。

「公衆衛生」を整備させるための職務が獣医師としての本当の柱だそうです。

動物だけが対象ではなく、私たち人間の健康にとっても身近な存在なのです。

 

また獣医師の数は少なく、珍しい職業であることを教えて頂きました。

獣医師になるための勉強ができる大学が私立大学・国公立大学合わせて16校しかありません。

 

ここから、馬や牛などの「畜産動物」を見る獣医師と「小動物」を見る獣医師にわかれるため、皆さんが飼っている犬猫などのペットを診察してもらえる獣医師さんは本当に数少ない中のお医者さんなのです。

 

 

 

 

主な活動について

東大阪市獣医師会では現在約30もの動物病院の先生が会員として活動しています。

獣医師会の会員は、大阪府獣医師会に所属する東大阪市内の病院で構成されています。

 

狂犬病予防

特に力を入れて活動しているのが狂犬病予防です。

小学校や地域の会館などに臨時の会場を設け、集合注射を行っています。

 

 

 

 

日本は現時点では狂犬病洗浄国ですが2013年、日本に近い台湾で狂犬病が見つかったため、狂犬病についての正しい知識を持つことが重要です。

狂犬病は感染すれば、人も動物も死亡率の高い大変恐ろしい病気です。

皆さんが海外に行った際には、安易に動物に触れないように心がけて下さい。

 

動物由来感染症対策

この対策は公衆衛生の面で、人間も動物もかかる感染症がどのくらい東大阪市内で発生しているかをチェックします。

 

学校飼育動物の取り組み

会員獣医師が東大阪市内の幼稚園や小学校をまわり、よりよい環境で子どもたちに飼育動物の世話をしてもらうため、主にウサギの飼い方の指導を行っています。

近年、子どもたちは動物と触れ合う機会が少ないことから、動物に気持ちがあることに気づきにくくなっています。

写真や絵を多く使ったパワーポイントでの講義や、実際に動物と触れ合い、接し方をレクチャーすることで、人間と同じように動物も生きていることを実感させます。

 

 

 

 

 

 

また先生方の中にも飼育に関する知識が明るい方が多くなく、先生向けにも講義を行っています。

 

大阪動物愛護フェスティバル

動物愛護フェスティバルは大阪府獣医師会の取り組みで、毎年秋に開催されています。

各支部ごとに催し物があり、綿菓子や射的などもあります。

その他、里親募集や犬のしつけ教室などもあり子どもから大人、そしてペットまで一緒に楽しめるフェスティバルとなっています。

 

 

 

 

ペットを飼おうと思っている人や飼っている人に知って欲しいこと

 

2025年問題

2025年問題とは団塊の世代が2025年頃までに75歳以上に達することにより介護や社会保障などが急増することです。

ペットを飼うにあたってもこれから高齢者になる人には考えて欲しいことがあります。

75歳以上の人がペットを飼い始めるとします。犬の寿命は10~15歳くらいと考えると、90歳頃まで面倒を見ることになります。

 

飼う以上は犬の性格や特徴を事前に勉強してから、高齢者に合ったペットを飼うことが重要になってきます。

例えば、高齢者が柴犬を飼い始めたとします。柴犬の方が力が強いので散歩の最中にこけて怪我をする可能性が十分に考えられます。

 

このように高齢者がペットを飼う時には自分の体力とペットの体力を比較して自分に合った動物を飼うことが望まれます。

 

災害時の対応について

災害が起こった際、ペットも一緒に避難したいという気持ちは皆さんおもちではないでしょうか。

しかし災害発生から72時間は人間が優先されます。

ペットのための防災のマニュアルはあるそうですが、災害時は何が起こるのか予測出来ないため、それだけでは安心できないのが現状だそうです。

ペットを飼っている人のみならず、家族ごとで災害が起こったらどうするか話し合いをしておくことが大切です。

 

犬猫以外のペットについて

ハムスターや鳥など、犬猫以外のペットを診察してもらえる動物病院が少ないと感じたことのある人は多いのではないのでしょうか。

 

これには理由があります。

 

犬猫以外の小動物の生態は一般的に飼育するのに必要な研究はされていますが、犬猫のように詳しい生態がわかっていないことも多く診察することが難しいからです。

 

他の動物を十分に治療する技術がないのにお金を飼い主から頂くのはトラブルにも繋がることから犬猫以外の動物を扱っている動物は少ないのです。

 

生態がわからない動物を飼うことは私達人間にもリスクが及ぶ可能性があるということです。

 

大学生に向けてメッセージ

大学生の皆さんの中には教師を目指している方も多いと思います。

実際に学校で働くようになって急に学校飼育動物担当を任せられることもあるかもしれません。

その時には少しだけ動物について勉強して欲しいなと思います。

先生が飼育の仕方をきちんと理解していれば子ども達への理解に繋がり、子ども達が動物の気持ちを理解しようとすれば、友達の気持ちも理解出来るようになり学校全体が良い環境になると思います、頑張って下さい。

 

 

寺田先生、ありがとうございました。

取材を終えて

感想

お話を聞いて一番衝撃だったのは、犬猫以外の動物の扱い方を詳しく習わないということでした。

私自身ハリネズミを飼ってみたいという気持ちがありましたが、ハリネズミ自体の生態が詳しく研究されていないということ、病院で見てもらうことが出来ないことを知り、無責任に飼えないなと思いました。

ペットを「可愛い」という理由だけで飼うのではなく、様々なリスクを考えた上で、責任や愛情をもって飼えるかを判断しなければいけないことがわかりました。

獣医師さんはペットを飼っている人のみに関係している職業だと思っていましたが、公衆衛生の面で、私達人の健康をサポートしてくれているのを知り、身近な存在に感じることが出来ました。

 

上山

一人の人間として、もの言わない動物たちとどう共生していくべきなのかとても考えさせられる時間でした。

小学校などへの出前授業のお話では、子供たちが動物をおもちゃなどと一動物として認識していない場合があると聞いて、当初はとても驚き、ひどい世の中になったものだと悲観的に感じていましたが、我に返って自分の幼い過去を思い返してみると、自分も動物の命を大切に思い、動物の身になって手厚く接していたのかと考えてみると、必ずしも、こどもたちを批判する資格は自分にはないなと思いました。

人間の感情だけで動物の感情や行動を制御されることが、いかに動物たちにとって理不尽で不愉快な扱いであると考え、人間側の十分な理解での対応が必要であると改心しました。

獣医師という職業への固定観念が一気に変化しました。

それは、ただ文字通り獣のみを診るお医者さんというのではなく私たちが普段健康に過ごすための公衆衛生を保つためのサポートをも担っているというのにはとても驚かされました。

職業を知るということは必ずしも自分の解釈が全てで、正しいものではないと学び、勉強になった取材となりました。

 

取材先

東大阪市獣医師会

東大阪市獣医師会 HP: http://www.higashiosakajuishikai.jp/

取材班

森彩香 近畿大学 総合社会学部 2年

上山華凜 近畿大学 総合社会学部 1年

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